傷だらけの君は
漆ノ巻
異変に気づいたのは、物置小屋に向かっている途中だった。
以前この小屋を使わせてもらってるとき、置き忘れたものがあった。
それを取りに行こうとして歩いていたら、物置小屋とはまた違う土蔵から......男の人のうめき声が聞こえた。
とても、辛そうな声。
扉が少し開いていて、あたしは考えるよりも先に中へと足を運んだ。
そこに広がっていた光景は。
「...誰だ、お前は......」
部屋の中で磔にされていた、男の人。
虚ろな目に乱れ切った髪。
きっと元は整った顔立ちをしていたんだろう、しかしそんな面影さえ消えかかっていて。
「見せもんじゃねぇぞ」
間違いない。これは拷問だ。
手と足の甲を深々と貫く釘にあたしは見覚えがあった。
「お前にはこの痛み、分からねぇだろうな」
「......分かりますよ」
「は?」
全身を駆け巡る鈍痛は今でも鮮明に思い出せる。