傷だらけの君は
古高さんの口から出た言葉はどれも現実味がなかった。
この京の町を火の海に......
大名を殺す......
天皇を長州へと連れ去る......
話しているときの古高さんの瞳には、すでに赤く燃え盛る炎が映っているようで。
あたしは恐ろしい計画を聞きながらごくりと唾を飲んだ。
その実行日までは、もう一月もない。
こんなに緻密な計画を立てていて、古高さん一人が捕まったぐらいで計画がなかったことになる?
......いや、なるはずがない。
「土方さん」
着物のすそをきゅっと握ると、今まで黙って古高さんの話を聞いていた土方さんがはっと我に返ったように息を飲んだ。
「......そんなこたぁ、絶対にさせねぇよ」
その顔には余裕の笑みが貼り付けられていて、古高さんを圧倒させる。
......けど、これはあたしの角度からしか見えない。
首元に浮き立った血管と強く握りしめられた拳は、ひた隠された土方さんの"怒り"だった。