傷だらけの君は
幾重もの足音が、死が近づいて来ているのを肌で感じながらあたしは唇をかみしめた。
もうこれ以上ゆっくりしていられない。
「沖田さん」
「だめだよ。それに、君に"これ"は治せない」
「でも」
やってみないと分からない。
もしかしたら治せるかもしれないのに。
「生きて。お願いだから」
初めて沖田さんが笑顔を崩した。
泣きそうな、怒っているような表情であたしを遠ざけようとする。
すぐそこまで、足音は迫っていた。
死ぬのはこわくない?
いいや、あたしはまだ死にたくない。
もっとこの人と一緒に生きていたいのに。
『生きて』
あたしは沖田さんをかばうように、背中に手を回した。
強く、願いを込めて抱きしめる。