傷だらけの君は
「新選組だ!」
誰かの声が上がった。
味方の声だったのかもしれないし、敵の声だったのかもしれない。
考える暇もなく、土方さんによって開け放たれた入り口から何十もの人がなだれ込んできた。
一面が浅葱色で埋め尽くされて、あたしはただ呆然とそこに突っ立ていた。
突然、後頭部に殴られたような痛みを感じる。
「ひ、土方さん!紅、頭怪我してるから……」
「いや、俺の幻覚かと思ってよ」
土方さんの舌打ちが後ろから聞こえてきた。
「本当にどいつもこいつも人の言うことを聞きやしねえ」
そのうちの一人は確実にあたしのことだろうけど、あたしの他にも土方さんを怒らせた人がいるのだろうか。
こっちを向け、と言われた通りに振り返ると土方さんはもう一度あたしの頭をぶった。
次は痛くなくて、じっと土方さんを見上げると、その顔は怒っているようには見えなくて。
盛大なため息のあと、自分の羽織をあたしへと投げつけるように渡してくれた。
「おい紅、そいつを絶対に離すなよ」
「っはい!」
あたしはその羽織を、沖田さんにかぶせるようにしながらおおきく頷いた。