傷だらけの君は


そこからはあっという間だった。


瞬きする暇もない、といったのはこういう状況なのだと思う。


土方さんたちの隊が合流したことによって、“斬り捨て”から“捕縛”への変更を近藤さんが告げた。


その言葉を聞いて、あたしは心の中でほっとため息をついた。


たとえ敵だとしても、命まで奪うことに心が痛んでいたから。



返り血をぬぐうこともなく相手を縛り上げていた土方さんが、近藤さんに何かを言っている。


それを真剣な面持ちで聞いていた近藤さんが、全体に聞こえるように声を上げた。




「新選組、撤収だ!」


どこからか雄叫びが上がった。

小さかったそれは、次第に大きくなっていって。

池田屋全体を包み込むように、空気を震わせていく。


やっと、終わった……



「げほっ……」

「沖田さん」


咳をしてうっすらと目をあけた沖田さんと、入れ替わるようにして徐々に視界が薄れていくことに気付いたときには、




「――――」


沖田さんの言葉も、何も、聞こえなくなっていた。



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