傷だらけの君は


そのときふと、あることが引っかかった。



「土方さんは知っていたんですか?沖田さんのこと」


「……いや、俺もあの日に知らされた」


あの日とは、池田屋に行ったときのこと。

沖田さんが血を吐いて倒れた日。



「総司のやつ、自分もふらふらなのに、倒れたお前のこと心配してたぞ。会いに行ってやれよ」

「……稽古の邪魔はしたくないので」


嘘ではなかった。



「相変わらず真面目だな、てめぇは」


「それに自分の仕事があるから、」


今日から女中の仕事も復帰するから、いっぱい働かないと。


そう意気込んで厨に行こうとしたときだった。


「……あ」

「どうした」


後ろから土方さんの声がかかってくる。


あたしは迷いながらも、振り返った。



「今日、非番でした」


「じゃあ暇じゃねぇか」


「いや、でも、それ以外にもやることはある……」



「今日はもう巡回もないぞ」

「……」


女中の仕事もない、巡回もないから怪我人もほとんど出ない。


たまに、こういう日があるのだ。

こんなとき、どう過ごしたらいいのかいつも悩む。


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