傷だらけの君は


悩んだりぼーっとしているうちに日が暮れてしまうから、結局何もせずに一日を終えてしまうのだ。



「こんなとき土方さんみたいに、俳句の一つでも作れたらいいのに」


「まあそうだろうな。
……待て。なんでそれを知っている?」


沖田さんが見せてくれたことを伝えると、土方さんの頬がぴくぴくと引きつっていたから、



「もしかして、言っちゃまずかったですか?」

「いや、別に……」


「あたしも好きでしたよ、あの俳句たち」

「たち?あいつどこまで教えてんだよ」


あんまり人に言いたくないことだったらしく、頭を抱えている。


あたしも、沖田さんも好きなんだけどなぁ。



新作できたらこっそり教えてくださいね、と言うと土方さんはもっと黙り込んでしまった。


今度あたしもひとつ詠んでみようかな。それで土方さんに批評してもらおう。



「お前もう、気分転換に町にでも行ってきたらどうだ」


「え、いいんですか?」


嬉しいけど、なんでちょっと疲れたような顔をして言うんだろう。



「いいから言ってんだよ。ついでに漬け物買ってこい」


「漬け物……いつものですね。分かりました」


土方さんの好きな物は漬け物。
そのなかでも特に沢庵をよく口にしていた。


町に土方さん御用達の店があるのを最近知ったからそこで買おう。



「ついでだからな?帰り道にあったらでいい」


「はい、行ってきます!」


「すぐ買って帰ってくんなよ!?」


分かってるのに、なんて。
何度も念を押されるから、思わず笑ってしまう。


土方さんの優しさに触れながらあたしは屯所を後にした。


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