傷だらけの君は
「ごちそうさまでした、美味しかったです」
「ありがとうね」
お店から出るとき、「紅ちゃん」と呼びかけられる。
「またおいで!」
振り返ると雪さんはまるで子どものように手を振っていたから。
「はいっ!」
あたしも同じように両手を振ると、雪さんの顔に笑顔が咲いた。
もしもまた雪さんが命を授かるときは、絶対に笑顔の似合う子になるだろうな。
そんな日もあんがい、遠くはないのかもしれない。
「雪さん、みたらしもう一本!」
「食べ過ぎだよ。よもぎにしときな!」
あたしがここにくると、必ずいる男の人。
雪さんを追うその視線に気付いてないのは、きっと雪さんだけ。
お店の中で繰り広げられる光景に自然と頬が緩みながら、そう思った。