傷だらけの君は


「ええと、お漬け物……」


土方さんは沢庵だけしか食べないから、今回はそれ以外のお漬け物も買って帰ろうかなぁ。


あたしが思うに、土方さんは同じ物を飽きるまで食べ続ける傾向がある。


それが今は沢庵なわけで、そのまえは餅。

さらに前はカブの味噌汁だったとか。


いつか沖田さんがあきれながら教えてくれた。



「やっぱり沢庵を多めに買って帰ろうっと」


いっそのこと一樽買うって手もあるけど……



そのときだった。



視界の端で、小さな男の子が転んだ。


走っていたから盛大に地面に突っ込んでいて、泥だらけの顔がぐしゃりと歪む。



「い、痛いよぉ……っ!」


すこし離れていても分かる、腕からの出血は思ったよりもひどくて。



「君。だいじょ……」


あわてて駆け寄ろうとしたとき、





「――大丈夫?」


あたしよりも先に、男の子の頭を優しい手つきでなでたのは一人の女性だった。


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