傷だらけの君は
「……ほうら、もう痛くない」
「本当だ!お姉さん、なにしたの?」
「痛いの痛いの飛んで行けーって願っただけだよ。ほら、もう行きなさい」
「うん!ありがとうっ」
男の子の後ろ姿を見送って、女の人も立ち去ろうとした。
「ま、待って!」
呼び止めるつもりなんてなかったのに。
このまま会えないって考えが頭をよぎっただけで、あたしは胸が押しつぶされそうになった。
それに、聞きたいこともあった。
「あら、なにか?」
そのときはじめて気付いたらしい。
あたしの顔を見て、一瞬驚いたような顔をしたのは多分……さっきの場面を見られていたと思ったから。
分かるんだ、あたしもあるから。
なんて言われるか分からないよね、どんな反応をされるか分からないからすごく怖い。
だけど女の人の動揺も一瞬で、すぐに笑顔を向けられる。
それはなによりも、慣れている証拠だった。
「あの、腕を見せてくれませんか」
「……え?腕を?」
「失礼します」
その腕の袖をすこし持ち上げた。
そこから覗くのは、まぎれもなく男の子の怪我で。
近くで見るとより痛々しさが増していた。