傷だらけの君は


「お母さん!」


「山崎!」



あたしなんかよりずっと冷静な土方さんに指示される前に、山崎さんは動いていた。



原因は?


分からない。


ただ衰弱している。


誰か医者連れてこい。


俺が行ってくる。



そんな彼らの声も、辺りのざわめきも。


あたしには、遙か遠い場所から聞こえる気がした。


倒れたお母さんは青ざめた顔で、血だらけの口を押さえている。



「い、いや……」


混乱する頭で必死に考えようとしても、動揺が色濃くなるだけで何一つ整理できない。



「ねぇ、やだよ……どうしたの、お母さん」


お母さんの手を掴んだ。


手に付いていた血があたしの手にも移る。


血は温かいはずなのに、ひどく冷たく感じた。




「紅、聞いて。この力を持って生まれた人間は、みんな短命なの。普通の人の半分も生きられない。私の母も、三十で死んだ。……私もきっともうすぐ死ぬ」



芯のある落ち着いた声だった。



死ぬなんて言わないでよ。


やっと会えたのに、またすぐにいなくなっちゃうの?


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