傷だらけの君は


そうだよ、いい人たちに出会えた。


あたしのために怒ってくれて、泣いてくれて、笑ってくれる。


あたしは新選組の人たちと出会わなかったら、笑い方も知らないままだった。


それを教えてくれたのは紛れもない、この人たちでこれから先もずっと一緒にいるつもりで。


だけど、その未来にお母さんがいないなんて嫌だよ。



「一緒にいて、もう置いてかないで」


「置いていかない。ずっとそばで見てるから」



そんなのじゃない。


空の上から、天国からなんて……言わないで。



「紅、ごめんね。本当にごめんね」


「お母さん、あたしそんな言葉聞きたくないよ!」



怒っているのに、お母さんは笑っていた。


その笑顔はこの場にいる誰よりもずっと晴れやかで、可憐で。




「……生まれてきてくれて、ありがとう。
あなたは、お母さんの大事な、大事な……」





それ以上、お母さんの口から言葉が紡がれることはなかった。



動かなくなったお母さんをずっと抱きしめていても、


二度と体温が戻ることはなかった。


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