傷だらけの君は
それがあまりにも自然だったから一瞬、何をされたのか分からなかった。
「あれ、今回は反応しないの」
意外そうに眉を上げた沖田さんに、ぱちぱちと数回瞬きをする。
い、いま、また……
「また不意打ちっ……!」
「遅いって」
夕焼けが赤くて本当によかった。
あたしの顔を元から赤かったように染めてくれるから。
「あの、許してくれましたか?」
「うん?」
「それ……」
どうやら忘れていたらしい。
視線を下げて確認した後、
「だいぶ派手に付けてくれたね……」
「すみません、ごめんなさい」
そうだ、と思い出したように沖田さんが声を上げた。
「土方さんが新しい俳句を詠んだから聴きに来いって言ってたよ」
「え!」
「あの人が自分からそんなこと言い出すなんて珍しいよ。明日はきっと槍が降るかも」
この数日の間、土方さんともまともに話せてなかったから嬉しかった。
沖田さんの手のひらが向けられる。
「一緒に行こうか。僕がいたら聞かせてくれないかもしれないけど」
あたしがその手を取ると、ぎゅっと優しく包み込んでくれた。
「帰ろう、屯所に」