傷だらけの君は
近くで見ないと気付かないほどだけど、沖田さんはちゃんと息をしていた。
規則正しく呼吸をして寝ているだけだったから、あたしはほっと胸をなで下ろす。
よかった……
目を瞑り、眠るその横顔は、ひどくやつれていた。
整った目鼻立ちはそのままで、そんな顔に不釣り合いなクマと痩せた頬。
元から白かったのに、病的な青白さというほうが今は正しかった。
いつか沖田さんがあたしにしてくれたように、額の上に手ぬぐいを乗せる。
すると、うっすらとまぶたが持ち上がって。
「……ああ、紅」
うつろな瞳があたしの姿を捉えた。
沖田さんは以前と同じように笑おうとしてくれるから、もしかしたら病気も嘘なんじゃないかって。
今にも起き上がって「本当は元気なんだよ」っておどけてくれるんじゃないかって、一瞬でも思ってしまった。
それほどに、沖田さんは死に怯えている様子なんてこれっぽっちも感じさせなかった。
「ごめんなさい、起こしちゃって」
「いや……うとうとしてただけだから。ちょうど話し相手に困ってたんだ」
そんな言葉に、あたしの胸がずきんと痛んだ。