傷だらけの君は
「まさか、紅」
真っ白な頭をふるふると振った。
あたしでもなかった。
だって、あたしの身体になんの変化もなかったから。
それは移ってないってこと。
だけどいまの沖田さんに、病魔の影はすこしも見えない。
「ぅっ…………えぐっ……、っ」
涙がもっと溢れてきた。
嗚咽が抑えられなくて、きっと不格好だっただろう。
大好きな人に見せる顔じゃないよね、絶対。
でもあたしだけじゃなかったから。
両手を広げている彼も、泣いていたから。
沖田さんの泣いてる顔なんて初めて見たな。
どんなことがあっても決して涙を見せなかった彼が
眉を下げて、くしゃりと笑いながら……泣いていたから。
……器用すぎだよ。
涙でぐしゃぐしゃの顔のまま、あたしは沖田さんの胸の中に飛び込んだ。
「――――治ってる。」