傷だらけの君は
土方さんの決心が変わることはなかったんだ。
その言葉を聞いた沖田さんの動きが止まった。
「なに、言ってるんですか?土方さん……」
「言葉の通りだ。紅を連れて、安全なところへ行け」
「もう治ったのに、僕はまだ戦います!」
「だからだよ。せっかく救われた命をこんなところで散らしてもいいのかよ」
「……逃げろってことですか」
土方さんは何も答えなかった。
そうだとも違うとも言わずに、ただ沖田さんを見つめていた。
だれも口を挟まない……いや、挟むことができなかった。
「お前にはもっと大事なものがあるはずだ」
「ここだって、……新選組だって僕には大事なものだ」
「総司」
「新選組を捨てて逃げるなんて、絶対にできない!
……それとも僕はもう新選組にはいらないってこと、」
「総司!」
沖田さんの針金が地面に落ちた。
その胸ぐらを掴んでいるのは、まぎれもない土方さんで。
「そんなの、決まってんだろ……」
雨がぽつぽつと降り始めて、
落ちてきた水が土方さんの頬を伝った。
「お前はどこにいようと、新選組の一員だ。
自慢の、一番隊組長だ……!」