傷だらけの君は
…やばい、崖から落ちた。
手に持ってたもの全部投げ出して、駆け寄った。
崖の下をのぞき込むと、ほとんど高さがなかったことにほっとする。
そして幸いにもすぐそこに引っかかってた。
手を伸ばしたらすぐに届きそう。
「走ったら危ないよ」
もう遅いけど。
ん、と差し出した手を掴もうとして
……また転げ落ちた。
これ高さあったら笑い事じゃ済まないんだけど。
まったく、世話が焼けるよね。
身を乗り出してもう一度伸ばした手を、今度はしっかりと掴んだ。
もう離さないから。
きっと土方さんたちや、瑠璃さんも。
僕たちのことを見守ってくれてる。
みんなの分も、幸せになろう。
最近ようやく反撃という言葉を覚えた彼女は、まるで僕さえも落とさんばかりの力でぐいぐいと引っ張ってくる。
本当に、最初の頃なら絶対に見せなかった顔だよ。
……いい顔してる。
身体じゅう木の枝で引っかけて。
「おかえりなさい、総司さん」
傷だらけの君は、笑った。