傷だらけの君は
「はやく帰らないと、父様に怒られる」
再び立ち上がろうとしたけど、やっぱり片足だけじゃうまく歩けず。
ぐらりと身体が前に傾き、倒れる、と思った瞬間。
「大丈夫?」
誰かが身体を支えてくれた。
知らない、男の人だった。
「ありがとうございます」
「いいえ。ところで、こんな暗いところで何してたの?」
「迷子になってしまって。申し訳ありませんが、家まで送っていただけないでしょうか」
仕事を……とはさすがに言えなかった。
あたしの仕事は、表立って行う仕事ではないから。
「きみの家を知らないんだけど……」
「大丈夫です、あたしが案内します」
「案内できるんなら、それは迷子と言わないんじゃ?」
たしかに。
実際あたしは迷子なんかじゃないし、一人で帰ることもできる。
足の骨さえ、折れてなければ。