傷だらけの君は
その言葉を聞いた瞬間、あたしは買い取られたことも頬を斬られたこともどうでもよくなった。
……売った?
頭を思いきり殴られたようだった。
あれだけ苦しんだ熱の比じゃないほど、頭ががんがんと響いてくる。
父様が、あたしを売ったの?
「お前には傷ついた隊士を治療してもらう」
そんな言葉もずっと遠くで聞こえるほど、父様に売られたという事実が受け入れられなくて。
今までどれだけ失敗しても、怒らせてしまっても、父様はあたしを見限ったりはしなかった。
……しなかったのに。
なんで、なんで……?父様。
「わかったか?」
いつのまに座り込んでいたんだろう。
ずいぶんと上から聞こえてきた声に視線をゆるゆるとあげれば、鋭く光る双眼があたしを捕らえていた。
あたしはそれ以上視線をあげることもなく、ぽつりと呟いた。
「わかりました」
……もう、どうでもいい。
好きに使えばいい。
口から出たその言葉に、後悔することはなかった。