傷だらけの君は
「父様」
家に入ると、父様は寝ていた。
豪快な寝息を立てて、あたしが帰ってきたことには気付いていない様子。
「父様」
あたしはもう一度呼びかけた。
「ん……なんだ、紅(べに)か。わざわざ起こすな」
「すみません」
あたしの足をちらりと一瞥すると、煩わしそうにあたしに背を向けた父様。
そのまま、またいびきをかき始めた。
仕方がない、少し痛むけど自分で歩こう。
「っ……た、」
いけない、また父様をどうでもいいことで起こしてしまう。