傷だらけの君は
「やっと追いついたぜ!......って、こいつなに泣いてやがんだ?」
「ほらさっさと立て。これからも働くって約束すんなら、命だけは助けてやる」
地面にお尻をつけたまま、父様が立ち去っていった道を見つめる。
何も言葉が出なかった。
父様とあたしは、血が繋がっていなかった?
道端で拾った?
親子じゃなかった?
それじゃああたしは一体、誰なの?
頬を伝う温かいなにか。
男たちの言葉でそれが涙なんだって分かった。
止まらなかった。
何を信じたらいいのか分からなくて、
どうしたらいいのか分からなくて、
ただただ泣くしかなかった。
ごちゃごちゃの頭の中で、淡く浮かび上がった人物。
……なんでいま、この人のことを考えてしまうんだろう。
だけどその存在は、あたしの中でどんどん大きくなっていく。
思い出すようにあたしはその名前を口にしていた。