傷だらけの君は


「......沖田さん」



助けて。


あたしの心の中に宿った、かすかな記憶。


居心地がいいと感じてしまったあの場所。



だめだなぁ……やっぱりあたし、彼らに甘えちゃってる。


だけどもう、止まらなかった。




......助けて。




新選組のみんな......助けて......っ!




「沖田さん!」


「聞こえてるよ。うるさいなぁ」



ふわりと風に揺れたのは、

あたしの目の前を支配したのは、


あの時とおなじ浅葱色の羽織。



沖田さんがそこに立っていた。



「紅」


彼は黒い髪をなびかせながら、あたしを見下ろす。


吸い込まれるような飴色の瞳から目が離せない。


そして月明かりに照らされて息を吐くようにほほ笑んだ。



あ……



いつもと、すこしだけ違う……笑顔。



目の中をじっと覗き込まれて。




「やっと見えた」


鋭かった目が、一瞬だけ緩まった。


< 74 / 253 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop