傷だらけの君は
「......沖田さん」
助けて。
あたしの心の中に宿った、かすかな記憶。
居心地がいいと感じてしまったあの場所。
だめだなぁ……やっぱりあたし、彼らに甘えちゃってる。
だけどもう、止まらなかった。
......助けて。
新選組のみんな......助けて......っ!
「沖田さん!」
「聞こえてるよ。うるさいなぁ」
ふわりと風に揺れたのは、
あたしの目の前を支配したのは、
あの時とおなじ浅葱色の羽織。
沖田さんがそこに立っていた。
「紅」
彼は黒い髪をなびかせながら、あたしを見下ろす。
吸い込まれるような飴色の瞳から目が離せない。
そして月明かりに照らされて息を吐くようにほほ笑んだ。
あ……
いつもと、すこしだけ違う……笑顔。
目の中をじっと覗き込まれて。
「やっと見えた」
鋭かった目が、一瞬だけ緩まった。