傷だらけの君は
全てが終わったあと、そこには無数の死骸が転がっていた。
どれもさっきまであたしを罵っていた人たち。
「た、たすけ......くれ......」
まだ息のある男があたしに手を伸ばしてきた。
もう虫の息なんだ、これはあたしの力でもきっとどうしようもできない。
だけど......
「紅、行こう」
伸ばしかけた手を、後ろから掴まれた。
振り返るとあたしの手を掴んでいる沖田さん。
その後ろには土方さんたちもいた。
……分かってる。
あたしは男に伸ばしかけた手で拳を作った。
「あ、あたしは……っ」
ぎゅっと強く、握りしめる。
今まで逆らったことなんてなかった。
流れに身を任せて自分の意見なんて持ってなくて。
ずっとずっと、周りの言いなりだった。
あたしは……
「自分の道は自分で決めるっ……そこに貴方たちはいない。薬箱じゃ、ない……!」
男の顔が絶望に変わった。
もう自分は助からないと分かったから。
あたしは必死で拳を握りしめた。
少しでもゆるめてしまったら、手を伸ばしてしまったら、きっとあたしはこの人を助けてしまうだろう。