傷だらけの君は
「えーっと……紅?」
最初に声をあげたのは永倉さんだった。
「ごめん、ちょっと顔あげて。俺の話を聞いてほしいんだけど」
顔をあげると真剣な目をしている永倉さんと目が合った。
「まずたぶんだけど、みんな紅のこと使ってるつもりはないから」
「俺は使っているつもりだ」
「土方さんちょっと黙ってて」
永倉さんがこほんと咳払いをする。
「みんなお前を心配してる。いつか壊れてしまいそうで、自分で自分を殺してしまいそうで……まあ、最初に治してもらった俺が言うのもなんだけどさ」
あのときは本当にありがとう、
なんて、あの時も言ってくれたのに。
あたしは覚えている。
お礼を言ってくれたのは永倉さんが初めてだったから。
もう治したあとでも笑いかけてくれる人は、それまでいなかった。
だから、もう、十分なのに。