傷だらけの君は
「頑張ることはいいことやで。けどな、自分の体は自分が一番、大切にしてやらないかん」
「……大切にしてますよ?」
「いいや、できてない。その証拠に……ほら」
「えっ、わっ」
ぐいと腕を引っ張られる。
山崎さんとの距離が近くなって、あたしは彼を見上げた。
山崎さんはあたしの腕を見ていた。
掴まれた腕を目の高さまで持ってこられると、無数の斬り傷があたしの目にもつく。
「これ、こんなに傷もろてる」
「や、大したことないので」
「じゃあ紅が治すこともなかったやん」
「すみません、快眠できないからどうしてもって言われて」
「はあ!?こんなむさ苦しい男所帯で快眠もくそもあるかいな!どこのどいつや全く、根性叩き直したる」
山崎さんが大きなため息をついたので、正直に話してしまったことを少し後悔してしまった。
呆れられた。
そう感じた瞬間。心音が少しだけはやくなって、あたしは慌てて山崎さんに向き直った。
「あの」
「腕、もう少し伸ばして」
言われた通り腕を伸ばすと今度は優しく掴まれて、傷口に薬をあてがわれた。
ポン、ポンと丁寧に処置してくれるその姿はやはりあたしの目指すべきものであり。
伏し目がちな山崎さんを見て、意外にもまつ毛が長いことを知る。
……あたし、こんなに長くない。