妄想の恋が実現した結果。
急に歌われたときは驚いたよ。
でもそれが母さんの気持ちって知ったときはとてもうれしかったんだ。
香織もこんな風に思える人と結婚するんだよ。」
私は涙が止まらなかった。
もう恋なんてしたくない。だったらもうこの世からさよならするんだ。
明日だけ部屋からでよう。そして屋敷の屋上から飛び降りるんだ。
なんだか落ち着いたように眠りに入ってしまった。
「鏑木、おはよう。昨日はごめんなさい。でも今日は一人で過ごしたいの。
休暇しなさい。これは命令よ?」
「かしこまりました。では失礼します。」
今日はシェフのご飯をめいいっぱい味わって
家の中を見て回る。なつかしいな。
あの頃はまだお母様が生きていたんだよな…
お母様、お父様、親不孝者でごめんなさい。
家を出て屋敷へ向かう。到着し入っていくと誰もいるはずがなくシーンとしていた。
すると誰か来たようだった。
「もう綾斗ったら~!」
「詩織、やめてくれよ。もう退院したんだから。」
綾斗を支えていながら話す女性がいた。私は急いで階段を上る。
「香織ちゃん?」
あまりにも急いで上がったせいか足音が聞こえてしまったらしい。
急いで屋上まで行く。後ろには苦るしそうに走ってくる綾斗の姿があった。
そうだよね、ここは綾斗の家だもんね。そりゃ詩織さんも来るはず。
もしかして私が大学に行ってる間もこの家に…?
「香織ちゃん!待ってくれ!どうしたんだ!?」
「なんでもないわ。早く彼女のところに戻ってあげれば?
あ、退院おめでとう。今まで私が邪魔だったわよね。
大丈夫よ、今から消えるから。安心して。」
「綾斗!もう、なんなの!」
後ろから走って詩織、という人が追ってきた。
「邪魔者なんかじゃない!」
「もうなにも聞きたくない!」
そう言って走って屋上の端まで行く。
「さようなら。お荷物で邪魔だったでしょ?さようなら。」
「キャー!!!」
悲鳴のもと私、本宮香織は飛び降りた。
目が覚めるとなにもない真っ白な空間。やった、死ねたんだ。
「こら!香織!あなたなんてことするの!」
後ろからお母様の声がした。やっぱり死ねたんだ。
「なにって?自殺よ。それ以外になにがあるの?」
「あなたはいつもそう。会社は私たちに迷惑ばかりかける。
会社に傷がついたのよ!どうしてくれるの!」
「いつもお母様はそう。会社はお父様のことを心配して私の事なんて見向きもしない。」
「あたりまえでしょ?すべてあなたが悪いんじゃない!
せっかくまだ命はつきてない。今すぐ戻ってお父様に謝りなさい!」
「嫌よ!なんであなたの言いなりにならないといけないの!」
でもここにいてお母様と過ごすのもいや。
「わかったわよ!いけばいいんでしょ!」
「ええ、そうよ!さっさといきなさい!」
そう、お母様は私のことを嫌っている。
有力者の家ではよくあること。
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