シンデレラと野獣
華を連れて家に戻ると、優香は夕飯の仕度を手伝う旨を伝えた。
何もしないでふんぞり返るのは、居た堪れない気持ちになったのだ。
「華も手伝う!」
食べた後の食器は片付けるものの、普段はテレビを観て、食事の仕度を手伝ったことのない華が、何やら楽しそうだと仲間に入ってきた。
「じゃあ、華ちゃんは、これかき回してくれる?」
康がサラダを作っている間、優香はビーフシチューの材料を切り、華に煮込んでいる野菜や肉をかき混ぜる担当をお願いした。
「なんか、楽しいね!」
嬉しそうな表情を浮かべる華に、康も満足気な表情を浮かべていた。
端から見たら、平和な家族のようだと優香が思っていた時、優香のポケットの中にあるスマートフォンが着信を告げた。
まきだと思った。散々無視を決め込んだくせに、自分の都合のいい時には、優香を呼び出す。
「電話、出なくていいのか……?顔が真っ青だぞ」
康に言われて「あ、はい。電話出ます」と優香は答えた。
「華ちゃん、これも入れてかき混ぜてもらっても大丈夫?」
「うん。大丈夫。分からなかったら、こうちゃんに聞くね」
大丈夫だと頷く華に少しだけ安心して、優香はリビングの外に出た後電話に出た。
「あなた今、どこで何をしているの?」
「え?」
「会社を無断欠勤だなんて……社会人としてありえないわ」
今度はこうきたかと優香は思った。相手にしないで、無理矢理にでも出勤しておけばよかった。
会社に出るなと課長から伝言を受け取ったが、まき本人が言ったわけではない。
しかし、優香は応戦した。無断欠勤したくてしたわけではない。
「そのことに関しては、何度も電話を……」
「口答えはおよし!」
「……」
リビングからは康と華の楽しそうな会話が聞こえて来る。
自分は、そちら側の人間ではなかったのだと改めて思い知らされた。
「優香。あなたは、思い上がっているようだけど、ダメなあなたを雇っているのは私の温情なのよ。世間も知らないあなたを、大事に育てているのに、あなたは好き勝手ばっかり」
「……すみませんでした」
「明日から、ちゃんと出勤しなさい。そして、契約は取れたの?」
「……いいえ」
「本当だめな子ね。偉そうに言うのに、何もできないじゃない」
嘲笑しながら、まきは電話を切った。
また、心の中に惨めな感情が渦巻いていく。父の大事にした会社でなければ、こんなところに執着していない。
離れてしまってもいいのではないかと思う。
それでいいの?本当に?
同時に、幼い頃の父と母の思い出が蘇る。唯一の家族の絆を断ち切って本当に、後悔しない?
不通音が、耳を通じて頭の中に響き渡った。
何もしないでふんぞり返るのは、居た堪れない気持ちになったのだ。
「華も手伝う!」
食べた後の食器は片付けるものの、普段はテレビを観て、食事の仕度を手伝ったことのない華が、何やら楽しそうだと仲間に入ってきた。
「じゃあ、華ちゃんは、これかき回してくれる?」
康がサラダを作っている間、優香はビーフシチューの材料を切り、華に煮込んでいる野菜や肉をかき混ぜる担当をお願いした。
「なんか、楽しいね!」
嬉しそうな表情を浮かべる華に、康も満足気な表情を浮かべていた。
端から見たら、平和な家族のようだと優香が思っていた時、優香のポケットの中にあるスマートフォンが着信を告げた。
まきだと思った。散々無視を決め込んだくせに、自分の都合のいい時には、優香を呼び出す。
「電話、出なくていいのか……?顔が真っ青だぞ」
康に言われて「あ、はい。電話出ます」と優香は答えた。
「華ちゃん、これも入れてかき混ぜてもらっても大丈夫?」
「うん。大丈夫。分からなかったら、こうちゃんに聞くね」
大丈夫だと頷く華に少しだけ安心して、優香はリビングの外に出た後電話に出た。
「あなた今、どこで何をしているの?」
「え?」
「会社を無断欠勤だなんて……社会人としてありえないわ」
今度はこうきたかと優香は思った。相手にしないで、無理矢理にでも出勤しておけばよかった。
会社に出るなと課長から伝言を受け取ったが、まき本人が言ったわけではない。
しかし、優香は応戦した。無断欠勤したくてしたわけではない。
「そのことに関しては、何度も電話を……」
「口答えはおよし!」
「……」
リビングからは康と華の楽しそうな会話が聞こえて来る。
自分は、そちら側の人間ではなかったのだと改めて思い知らされた。
「優香。あなたは、思い上がっているようだけど、ダメなあなたを雇っているのは私の温情なのよ。世間も知らないあなたを、大事に育てているのに、あなたは好き勝手ばっかり」
「……すみませんでした」
「明日から、ちゃんと出勤しなさい。そして、契約は取れたの?」
「……いいえ」
「本当だめな子ね。偉そうに言うのに、何もできないじゃない」
嘲笑しながら、まきは電話を切った。
また、心の中に惨めな感情が渦巻いていく。父の大事にした会社でなければ、こんなところに執着していない。
離れてしまってもいいのではないかと思う。
それでいいの?本当に?
同時に、幼い頃の父と母の思い出が蘇る。唯一の家族の絆を断ち切って本当に、後悔しない?
不通音が、耳を通じて頭の中に響き渡った。