シンデレラと野獣

 「キスは初めてなのか?」
 
 心臓の音が破裂しそうだった。目の前に、(こう)の顔がある。男らしくゴツゴツとした手が、優香(ゆうか)の頬を優しく撫でる。

「あんまり、弄ばないでください」

 顔が真っ赤になっている自覚はあった。康は、そんな優香の顔を見ると優しく笑った。

ベッドの軋む音、カーテンの隙間から差す月明かり。

「弄んでいるつもりは、ないんだがな」

 ため息と共に、落とされる口付けに、身体が熱く反応する。

 ただの擬似恋人なのに、なぜこんなにドキドキしてしまうのだろうか。
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