Silver Night-シルバーナイト-
「あ、本当だ。おーい!琉聖ー!!」
私の手を引きながら大きく琉聖に手を振る佑衣。
それに気が付いたらしい琉聖が違う方を向いていた視線を私達二人へと向けた。
「待っててくれたの?」
「悠真達が教室から出れねェらしいから、迎えに行けって言われたんだよ」
視線をそらしながらそんな事を言う琉聖だけど、きっと悠真に頼まれなくても来てくれてたんだと思う。
琉聖って実はそういう人だから。
本当は優しいくせに、テレ隠しをしちゃうような可愛い奴だから。
「ありがとう」と琉聖に笑顔を向ければ「フンっ」と鼻を鳴らして私の頭へとポンっと手を置いた。
「琉聖はクラスの手伝いとかないの?」
「俺は看板係」
看板係…らしい琉聖だけれど、その手には看板なんてなくて…それどころかチラシすら持っていない。
本当に宣伝する気があるのだろうか…と疑問に思ってると「行くぞ」と言われて背を向ける琉聖の背中を見て唖然とした。
琉聖の背中にはA4サイズの紙に黒ペンで無造作に書かれた文字。それがガムテープで貼り付けられている。
しかもそれは驚くほど乱雑に書かれており、ヤル気の無さが良く伝わってくる。
『3階、たこ焼き』とだけ書かれたその用紙は、とても看板は見えなくて…宣伝する気なんか毛頭なくて…
だけどわざわざそれを突っ込む気にもなれず、そのまま琉聖の背中を追いかけた。