Silver Night-シルバーナイト-



一瞬だけ見開かれる綺麗な薄茶色の瞳。
それは確かに私を捉えていて……




だけど次の瞬間には「あ、ごめんなさい…私お邪魔してしまって…」と申し訳なさそうな顔つきで頭を下げる。




そんな姿でさえ可愛い彼女は、梓の隣が良く似合う。




後ろの佑衣が悠真に「せっかくDVD借りたのに帰るの?」なんて耳打ちをしているのが聞こえて来て、一方私の前にいる琉聖はただ無表情で彼女を見つめていた。



「じゃあ、帰るな」



梓に向かってそう言った悠真に、梓は視線を写すと真剣な顔をして「悪い」と申し訳なさそうに低い声を出す。




その表情はどこかぎこちなくて…見慣れない風景で…




そんな光景を見ながらボーっとしていると、ただ立たずんでいる私に梓の視線が降ってきた。




その視線を感じてか、思わずビクッと震える私の肩。



梓の瞳が私だけを閉じ込める。


いや、正確には閉じ込められていないんだけれど…閉じ込められているようなそんな感覚になる。


その瞳はどこか困ったように歪んで見えて…
だけど、梓と朱音と呼ばれる彼女が隣り合っているのを見ているのが何故か辛くて……私はスッと顔をそらした。



前に琉聖がいてくれて助かった。
一番前で直接見ていたくない。何だか胸が鉛のように重たくて…思わず琉聖の背中辺りの服を掴む。



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