Silver Night-シルバーナイト-
マンションのエントランスから出た後、琉聖が掴んでいた腕をパっと離して私を見下ろす。
「……何?」
「別に」
その顔はどこか真剣で見たこともないような表情で、別にって感じには見えない。
そんな私と琉聖の空気を壊すように、佑衣が能天気な声で私が思っていた事と同じ疑問を口にする。
「あの人だれ?」
「多分、梓の幼馴染」
「え、幼馴染ってあの幼馴染?」
あの幼馴染……?
「あぁ、多分ね」
「多分じゃねェ、絶対そうだろ。あの感じ」
どうやら三人ともあの人に会ったのは初めてらしく、だけど梓の幼馴染だという事は分かるらしい。
「ねぇ、あのって何…?」
思った事をそう口に出せば、悠真が困ったように眉を下げた。
「俺らも詳しくは知らないんだけどね、何かあの子心に傷を抱えてるらしくて…頼れるのは梓しかいないらしい」
心に傷……
「頼ってるじゃねェだろ。梓を縛ってるの間違いだ」
そう言った琉聖の言葉には、物凄く棘があって…琉聖は彼女の事をよく思ってないのかもしれない。
だからさっき、あんなに無表情で見つめてたのか。
「まぁ確かに、さっきのを見る限りかなり梓に依存してそうだよね」
「だろうな、そうじゃなきゃあんな頻繁に呼び出したりしねェって」
「呼び出し…」
「梓のヤツ、たまに電話来て出てくだろ。それ全部あの女の呼び出し」
やっぱりそうだったんだ……彼女っていうのは違ったけど…やっぱりあの子に会いに行ってたんだ。