Silver Night-シルバーナイト-
まるで、触れられている右肩に心臓が付いているみたいにドクドクとそこばかりが緊張していて…
店を出る時に、すれ違った女の子達の視線なんて次は一切気にならなかった。
梓に肩を抱かれたまま店外に出ると、少しだけ冷たい風が頬をかすっていく。
ブルっと一瞬身震いをすれば、肩に置かれていた梓の腕がギュッとさらに私を引き寄せた。
「寒いか?」
「少しだけ、でも大丈夫」
耳元のすぐ側で聞こえてくる梓の低音な声がやけにくすぐったく感じる。何だか恥ずかしい。
けれど店の外に出ても、周りの視線から解放される事はなくて、それどころか梓の行動でさらに目立っているような気さえする。
道を通り過ぎる人のほとんどが、当たり前のように梓を見て…その後私を見る。そして必ずと言っていいほど物凄く驚いた顔をしているのがよく分かった。
それでも、さっきの狭い店内のように直接話し声が聞こえてきたり、強い視線を感じる事はなくて、
というか、そんなやすやすと梓に近寄れる人なんか一人もいなくて
視線や話し声は聞こえるものの、それもほとんど気にならない程度だ。