Silver Night-シルバーナイト-



コツンコツンとやけに綺麗な革靴の音が響くと、前にいた男二人が道を開けるようにしてサイドへと避ける。



それに合わせるようにして、後ろにいた一人の男が数歩前へと歩き出しその足を止めた時…思わず私は一瞬息を止めてしまった。





梓とは正反対の黒い髪。

綺麗で見入ってしまうほど艶のある漆黒。




目元は緩やかに弧を描くようなタレ目で、薄いグレーの瞳がやけに印象的だった。



形の良い唇に、透き通った肌…言葉にするならば、美形と言うのがふさわしいかもしれない。




先ほどまで騒ぎ立てていたギャラリー達も、いつのまにかシンッとしていて…まるでこの街中の人達がこっちを見ているんじゃないかと思うほど静まり返っている。




そんな漆黒の男は、グレーの瞳を少しだけ細めると




「久しぶりだな、梓」





この場に似つかわしくない


やけに穏やかな声で、ゆっくりとそう口にした。





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