Silver Night-シルバーナイト-
次に腕を引かれた時には、今度は拒否が出来なかった。
何故なら…思っていたよりもずっと、新が私の手を優しく握ったからかもしれない。
そして何より…梓と朱音さんの事を知りたいと…そう思ってしまったかもしれない。
新に連れて来られたのは、裏路地に入った所にある小さな喫茶店だった。
それは、彼が選ぶには何だかとても意外で…古びた焦茶色の木製のドアをギィーっと開け店内へと入る。
カランカランと小さな鈴の音を響かせたドアがパタンと閉まり、中にいた店員さんが私達に気が付くと「二人で」と言った私と新を奥の席へと案内してくれる。
「…ここよく来るんですか?」
「ん、まぁたまに」
初見にしては慣れた様子で店内に入っていくものだからそう聞けば、メニュー表を私へと手渡しながら新は頬杖を付く。
「意外ですね」
「何が?」
「カフェとか来なそうなのに」
「一人の時間が好きなんだよ、静かな場所も好きだし」