Silver Night-シルバーナイト-
「あ、そういえばお前連絡先教えろよ」
腕を組み、後部座席に踏ん反り返るようにして座っていた琉聖がポケットからスマホを取り出す。
「あ、うん」
私の白いスマホを琉聖に渡すと、琉聖は素早く親指でスムーズに操作をしていて、まるで私とは桁違いの操作の速さだ。
「ほらよ」
ポイっと投げ捨てるようにして帰ってきた私のスマホには、新しく三人の連絡先が登録されていた。
元々アドレス帳に登録されている連絡先は、聖と学校と間宮家のものしか入ってなくて…三件増えただけでやけに多くなったような気がする。
「…ちょっと嬉しいかも」
「あ?」
小さくそう呟くと、隣にいた琉聖に聞こえてたらしくて「何でもない!」と言って急いで首を横にふった。
「お前、休日何してんの?」
何してる…?
私は脳内でいつもの休日の自分の行動を思い出すようにグルグルと考えるけれど、外をボーっと見たり…本を読んだり…特に何かをしているとは言えない。
「何にも」
「何にも?」
「何にもしてないよ」
「誰かと遊び行ったりしねェの?」
誰かと遊びに行くことなんてない…本当に時々聖が間宮の用事や塾がないときに一緒に出掛けるくらいで…
「友達いないし、別にいつも家にいる」
そう琉聖に言った後、暗いことを言ってしまったかと思って琉聖を見上げれば
「なら、お前休日も倉庫来いよ。迎え行ってやるから」
「え?」
「用事ある時は良いけど、無いときは俺らと一緒にいろよ」
「……いいの?」
休日の日に誰かと一緒にいるなんて、思った事も無かった。
夜寝て、朝起きて、学校に行って…それ以外の行動をしない私には、琉聖のお誘いは初めての経験で少しだけ心を踊らす。
人と関わる事が苦手なはずなのに…どうしてこの三人にはそう感じないんだろう。
少し考えた後、そうか…と一つの考えが頭に浮かぶ。
三人は私の事を何にもしらないからだ。私が間宮だと言うことも…聖の従姉妹だと言う事も…私の黒い部分も全部全部知らない。
だからなんだか気が抜けてしまうのかもしれない。