Silver Night-シルバーナイト-
「………梓」
あまりの驚きに、梓の制服姿始めて見たな…なんて呑気な事を考えていて、
だけど、次の瞬間…梓の表情を見て思わず一歩後ろへと後ずさりした。
鋭く切れ長な瞳は、いつもよりも高く持ち上げられ…そして眉間には深くシワが寄せられている。
どこかイライラしているような…それでいてピリピリとしているような雰囲気を感じる。
これは、確実に怒っている……
一歩後ずさったまま、怒っているであろう梓をただ見つめる事しか出来なくて…そんな私にシビレを切らしたのか梓は「チッ」と舌打ちを落とすと口を開いた。
「お前、こんな時間に何してんだ」
え…何と言われても…
パーティーに行ってましたなんて、何故かこんなに怒っている梓にそんなふざけた事を言えるわけがない。
しかもこんな時間って、まだ21時だけど…
「ちょっとお出かけを…してました…」
深く刻まれていた眉間のシワは、さらに深く刻まれてそして私を見下ろしてくる。
「一人か」
「え?」
「お前一人かって聞いてんだ」
「あ、うん…そうです」
「何で濡れてんだよ」
「え?何で濡れてる…?雨、だからかなぁ…?」
そんな事聞かれても、雨だからそりゃ濡れるし。そもそもバイクに乗っている梓だってびしょ濡れじゃん。
「そういう意味じゃねェ」
どうやら「何で濡れてる」に対しての私の答えが気に入らなかったのか、梓は呆れたようにため息を落とす。
それにしても…こんなに梓と話したのは初めてかもしれない。
初めて会った日も少しだけ話したけど…あれ以来倉庫に行っても梓とはほとんど話した事はなかったから。