Silver Night-シルバーナイト-
「乗れ」
「……?」
「後ろ」
単語のみで話してくる梓は、話すのが苦手なのか…それともやっぱり人見知りなのか。
自分の被っていたメットをさっさと外すと、それを私の方へと差し出してくる。
これは…バイクに乗れという事なんだろう…
「あの…大丈夫だよ、私歩いて帰れる」
どうやら家まで送ってくれようとしているらし梓だけど、私は今一人でいたい気分なのだ。
どんな人でも、時々こういう時ってあると思う。
一人で居たい時とか、ふと夜道を静かに歩きたい時とか…
まぁ雨に濡れたいってわけではないけど…
私は今そんな『一人で居たい』時なんだ。
「本当に大丈夫」
梓に差し出されたメットを押し返すと、梓は不機嫌そうに私を見下ろしてくる。
「そうは見えねェけど」
え……?
「何かあったんじゃねェのかよ。そんくらい見れば分かる」
なん…で…
「しかもこんな夜にずぶ濡れの女放っておくほど、俺は冷めた人間じゃねェ」