Silver Night-シルバーナイト-
二度目に起きた時には、カーテンから強い日差しが入りこんでいて、眉を歪まさせ目を開ければさっきまでいたはずの梓はそこにはいなくて…ゆっくりと起き上がる。
何だかいつもよりもグッスリと眠れた気がす。
やけに頭がスッキリとしているような感じもある。
ベットから降りると、梓に借りた大きなスウェットを少しに引きずるようにしてペタペタと歩き部屋に一つだけある扉を開いた。
扉の外に広がる世界は明るく眩しくて…
目を細めるようにて周りをグルリと見渡すけれど…そこに梓の姿は見当たらない。
少しして、ベランダの窓が少しだけ空いている事に気がついてそこに近づいて見れば、見えたのは梓の背中。
カラカラっと小さく音を立てて窓を開けると、梓がそれに気が付いたのか、こっちへとゆっくりと振り返った。
「起きたのか」
「…うん」
「寝れたか」
「うん」
彼はいつもの服装とは違い、グレーのスウェットに黒いティーシャツ。短めの白銀の髪はセットされておらず無造作になっている。それがまた何故か無性に私の心をザワザワとさせて…
右手に持っていたミネラルウォーターを一口口にした梓は、遠くを見つめるようにして再び前を向く。
「…たまに、何も考えたくなくなる時がある」
流れるようにして話し出した梓の声は、凄く静かでそして儚く聞こえる。
「そうすると、空見たくなんだよ」
つまり、ベランダに出て外を見渡している今の梓は…何にも考えたくなくなった時だと言う事だろうか。
でも、それってなんだか凄く良く分かる気がする。
何もかも忘れてしまったら、これほど楽な事はないのに…とか。真っ黒な自分を見なくて済むのに…と思う事が良くある。