Silver Night-シルバーナイト-




「なぁ、お前の逃げ道ってどこ」




「………え…」




「お前が逃げ出したくて仕方なくなった時、逃げる場所ってある?」




逃げ道……

逃げる場所……





そんなこと…考えた事も無かった。
だってそんな場所…あるわけないってずっと思ってたから。




「……わからない」





そう小さく答えてみせれば、梓は少しだけ眉を垂れ下げおもむろに軽く笑う。




「だよな」





と言ったその言葉が、あまりに苦しそうで……痛くて…




思わず自分と梓を重ねて見てしまう。




「梓は…何処かへ逃げ出したくなる時が…あるの?」





そう聞き返してみせれば、梓はやっぱりどこか遠くを見つめているようで…その瞳は少しだけ細められた。





「逃げたい…とは少し違げェ。でも時々苦しくなる時がある」





シルバーナイトの事を、ここら一体で知らない人は居なくて




皆んなが皆んな毎日梓の話しで持ちきりで。




彼は歴代最高で最強の総長……






でも、そんな人物でも苦しく感じる時がある。


こんなにも儚い顔をする時がある。





「つーか、俺の事は良いんだよ」




「………」




「お前、もうあんな事すんな」





「…え?」





「雨の中、夜遅くに一人でいんな」





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