冷徹皇太子の溺愛からは逃げられない
「お嬢様から離れてください!」

「マッジ、いい加減にして! この人は私を助けてくれたいい人よ」

「何をおっしゃっているのですか⁉ 冬でもなければ雨も降ってないのに、フードを被っているような人、何か理由があって顔を隠してるんでしょう⁉ 絶対に怪しいに決まってます! も……もしかしたら、お尋ね者の類じゃ……お嬢様、逃げてください!」

「ちょっとマッジ、落ち着いて!」

 散々、失言を並べた挙句、勝手な想像で震えながらもライラを引っ張って路地を出ようとするマッジを、ユアンは鋭く睨みつけた。

「お前、言わせておけば……!」
「待て、ユアン」

 今にも声を荒げそうなユアンの肩を軽く押さえると、ウォルは一歩前に出た。

「すまない。不安を与えるつもりはなかった。ただ、目立ちたくなくて隠していただけだ」

「目立つ、って……やっぱり、お尋ね者……!」

「もうマッジ、黙って!」

 ライラにピシャリと言い渡されて、マッジが口をつぐむ。

 主人らしい威厳もあるんだな、とライラを見ながらウォルは思い、そっとフードを外した。

 その下から現れたのは、太陽の光を受けて眩しい輝きを放つ白銀の髪だった。額にかかる前髪と水晶のような透明感のある水色の瞳が相まって、冷涼な空気さえ醸し出している。通った鼻筋と形の良い唇も同時にハッキリと露になり、その秀麗な素顔に見入られたようにライラの瞳が大きく見開かれた。

 あれほどうるさく叫んでいたマッジも雷に打たれたように直立したまま、ウォルの顔を凝視している。

「陽射しの強い太陽の下に出ると、この髪色は目立つんだ。だから、必要がない時は隠している」

 ウォルはそう言うと、再びフードを被った。
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