冷徹皇太子の溺愛からは逃げられない
 すると、ライラの顔がパッと輝いた。

「とても素敵な髪色ね。隠してしまうのは勿体ないけれど、事情は人それぞれだもの。ねえ、これでもう変なことは言わないでね、マッジ」

「そ、そうですね……失礼しました」

 ライラの声に我に返ったマッジが、それでも渋々といった感じで頭を下げる。

「ですが、身元の明らかでない男性たちと、お嬢様を一緒にいさせるわけにはいきません。もし悪い噂が立ったりしたら大変です。さあ、帰りましょう」

「ええ……わかってるわ」

マッジの中では、フードを被る事情が判明しただけのことで、やはりウォルは不審者の域を脱してはいないらしい。ライラの返答にホッとした笑みを浮かべたマッジだったが、その直後、ウォルがライラの腕を掴んだのを見て、一気に眉を吊り上げた。

「ちょっと、あなた何を……!」

「まだ行くな」

 ウォルの声が低く響いた。ライラは驚いてウォルの顔を見つめたが、その視線は自分の方に向けられていない。彼はその向こうーー路地の入口をじっと見据えている。

 そこには目つきの悪い四人の男たちが、行く手を遮るようにして道いっぱいに広がっていた。何かここに用事があるとは思えず、動かずにじっとこちらを見ている。

 不穏な空気を感じ、ウォルは出口を求めて反対の方向へ首を巡らせた。だが、時すでに遅く、同じようにガラの悪そうな男たち五人によって塞がれている。

(囲まれたか)

 何が目的なのかはわからないが、このくらいの人数ならユアンとふたりだけなら突破するのは容易い。しかし、今はライラとマッジがいる。ふたりの身の安全が最優先だ。
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