冷徹皇太子の溺愛からは逃げられない
「その日、私はお庭で摘んだお花をどうしても母のお墓に供えたくて、少し離れた所にあるエヴェレット家の墓地へひとりで歩いて向かったの。子供だったし、いつもは馬車で行っていたから、距離感がよく掴めてなかったのね。そのうち天候が急変して、雨に打たれてた私を兄が馬で探してくれたの。でも、お屋敷の手前で近くの木に雷が落ちて、それに馬が驚いて……兄は私を庇って落ちて……」
フィラーナの声が小さく震え出す。
「……兄は身体が元気だったら、やりたいことが沢山あったはずよ。それを私が奪ってしまったの。あの日、私が出掛けなければ、っ何度も自分を責めたわ。……でも後悔しても過去は戻らない。だったら、兄に助けてもらった命を兄のために使おう、って思ってずっと生きてきたわ」
ウォルフレッドは、フィラーナの美しい横顔をじっと見つめていた。自由奔放に生きてきたと思っていた娘が、こんな思いを抱えてきたとは知らなかった。
「……だったら……俺の落馬で辛いことを思い出させたな。悪かった」
「どうして謝るのよ。あなたが無事でいてくれて感謝してるわ。……本当にありがとう」
フィラーナはウォルフレッドの方を向いて、儚げに微笑んだ。緑の瞳が夕陽を受けて、潤んでいるようにも見える。
ウォルフレッドは堪らず、フィラーナを強く抱きしめた。
フィラーナの声が小さく震え出す。
「……兄は身体が元気だったら、やりたいことが沢山あったはずよ。それを私が奪ってしまったの。あの日、私が出掛けなければ、っ何度も自分を責めたわ。……でも後悔しても過去は戻らない。だったら、兄に助けてもらった命を兄のために使おう、って思ってずっと生きてきたわ」
ウォルフレッドは、フィラーナの美しい横顔をじっと見つめていた。自由奔放に生きてきたと思っていた娘が、こんな思いを抱えてきたとは知らなかった。
「……だったら……俺の落馬で辛いことを思い出させたな。悪かった」
「どうして謝るのよ。あなたが無事でいてくれて感謝してるわ。……本当にありがとう」
フィラーナはウォルフレッドの方を向いて、儚げに微笑んだ。緑の瞳が夕陽を受けて、潤んでいるようにも見える。
ウォルフレッドは堪らず、フィラーナを強く抱きしめた。