冷徹皇太子の溺愛からは逃げられない
しかし、日に日に聡明に成長していくウォルフレッドを疎ましく思う人物たちがいた。テレンスの母である王妃と、彼女の伯父の当時の宰相である。王妃にしてみれば、エリクはもとより眼中にはないものの、ウォルフレッドの母は一国の王女で、彼の身体にはその崇高な血が受け継がれている。当時まだ王太子は決まっていなかったが、やっと授かったテレンスを溺愛し温室育ちにしていた王妃にとって、ウォルフレッドは可愛い息子の輝かしい未来を阻む悪魔のような存在でしかなかった。
「俺が五歳の時だった。食事に毒が盛られたのは。口に含んだのは少量だったのも幸いしたが、いち早くエリクが俺の異変に気づき、すぐに侍医に診せたことで全身に毒が回る前に俺は救われた」
だが、これは一時しのぎにすぎないと感じたエリクは、療養を兼ねてウォルフレッドの身を王女の後見でもあったバルフォア家に預けてはどうか、と父王に提言した。食事に毒を盛ったと思われる給仕が直後に服毒自殺を図ったので、真相は闇の中に消えてしまったが、王妃の狂気じみた嫉妬深い性格に王も思い当たるところがあったのだろう。エリクの意見を聞き入れ、ウォルフレッドは将来側近となるレドリー、ユアン兄弟と共にバルフォア家で十年の月日を過ごすことになったのである。
「俺が五歳の時だった。食事に毒が盛られたのは。口に含んだのは少量だったのも幸いしたが、いち早くエリクが俺の異変に気づき、すぐに侍医に診せたことで全身に毒が回る前に俺は救われた」
だが、これは一時しのぎにすぎないと感じたエリクは、療養を兼ねてウォルフレッドの身を王女の後見でもあったバルフォア家に預けてはどうか、と父王に提言した。食事に毒を盛ったと思われる給仕が直後に服毒自殺を図ったので、真相は闇の中に消えてしまったが、王妃の狂気じみた嫉妬深い性格に王も思い当たるところがあったのだろう。エリクの意見を聞き入れ、ウォルフレッドは将来側近となるレドリー、ユアン兄弟と共にバルフォア家で十年の月日を過ごすことになったのである。