冷徹皇太子の溺愛からは逃げられない
離れて暮らしていてもエリクはよくウォルフレッドを訪ねては、城下町にも連れ出し、実際にこの目で見て物事を判断する大切さを語っていたらしい。
「エリクは、王族の中でも出自の低い自分は何の影響力も持たないがこの国と民のために尽力したい、と常々言っていた。だから、そのあと王太子がエリクに決まった時、俺は心から嬉しかったし、将来エリクの治世を支えることが俺の生きる道だと、改めて決意した。……だが、俺が十五歳の時、エリクは妻と共に帰らぬ人となった」
夫婦で外交のために隣国を訪れた帰りに不慮の事故に遭い、幼かったために旅に同行できなかったセオドールだけが遺されてしまった。
「エリクが死亡し、喜んだのはテレンス支持派だ。俺は王宮にはいないし、テレンスに王位継承権が移ると期待したはずだ。だが、兄の葬儀が終わっても、二ヶ月以上過ぎても、次の立太子の儀は行われなかった。父もテレンスが王の器ではないことを認識していたんだろう。そして程なく俺は王宮に呼び戻された」
「……それは陛下が、ウォルを次の王太子に、と?」
「ああ。厳密に言えば、俺の王太子としての資質を問うために、だ。……だが、俺は王太子の地位に何の執着も持っていなかった。外での暮らしが長かったから王宮での生活は堅苦しいと思っていたのもあるが、何せ俺は兄の下で働くことしか考えていなかったしな。見ての通り、他人に愛想を振りまくことが苦手な俺には、人の上に立つことなど考えられなかった。……だが、俺が辞退したところで、父がテレンスを選ぶとは考えられない」
「じゃあ、誰に……」
フィラーナはそう疑問を口にしたところで、何かに気づき、目を見開く。
「エリクは、王族の中でも出自の低い自分は何の影響力も持たないがこの国と民のために尽力したい、と常々言っていた。だから、そのあと王太子がエリクに決まった時、俺は心から嬉しかったし、将来エリクの治世を支えることが俺の生きる道だと、改めて決意した。……だが、俺が十五歳の時、エリクは妻と共に帰らぬ人となった」
夫婦で外交のために隣国を訪れた帰りに不慮の事故に遭い、幼かったために旅に同行できなかったセオドールだけが遺されてしまった。
「エリクが死亡し、喜んだのはテレンス支持派だ。俺は王宮にはいないし、テレンスに王位継承権が移ると期待したはずだ。だが、兄の葬儀が終わっても、二ヶ月以上過ぎても、次の立太子の儀は行われなかった。父もテレンスが王の器ではないことを認識していたんだろう。そして程なく俺は王宮に呼び戻された」
「……それは陛下が、ウォルを次の王太子に、と?」
「ああ。厳密に言えば、俺の王太子としての資質を問うために、だ。……だが、俺は王太子の地位に何の執着も持っていなかった。外での暮らしが長かったから王宮での生活は堅苦しいと思っていたのもあるが、何せ俺は兄の下で働くことしか考えていなかったしな。見ての通り、他人に愛想を振りまくことが苦手な俺には、人の上に立つことなど考えられなかった。……だが、俺が辞退したところで、父がテレンスを選ぶとは考えられない」
「じゃあ、誰に……」
フィラーナはそう疑問を口にしたところで、何かに気づき、目を見開く。