冷徹皇太子の溺愛からは逃げられない
「もしかして、陛下はセオドール殿下を……」

「その可能性は高かった。セオドールは前王太子の嫡子であり、理由付けとしては不足はない。だが、それに納得しない王妃一派が次にどんな行動に出ると思う?」

「まさか……セオドール殿下を亡き者に……? だって、まだ当時は幼い子供だったはずよ?」

 恐ろしい仮設にフィラーナの顔は徐々に青ざめ、唇が震える。ウォルフレッドは静かに頷いて肯定の意を示すと、そのまま話を続けた。

「幼子だからこそ、病気に見せかければ始末しやすい。かつての俺にしたようにな」

 吐き捨てるような口調には、明らかに犯人たちへの侮蔑が込められている。

「エリクに助けられたこの恩を本人に返すことはできなくなってしまったが、これからは代わりに兄の忘れ形見を守り抜くと決意した俺は、自ら後継者争いの場に出て、テレンスに勝った。俺が王太子になれば、奴らの矛先は俺に向くからな。数日前の襲撃事件を覚えているだろう? 捕らえた賊は雇われただけの輩だと判明したが、後ろで糸を引いていたのはおそらくテレンス派の者たちだ。ここ最近、静かに動き出したのは把握しているが、まだ全体を掴みきれていない。だが、絶対に俺の代で殲滅させる」

 ウォルフレッドが拳を強く握りしめる。

(ウォル……あなた……)

 彼の瞳に闘志にも似た光を感じたフィラーナは、ある結論に辿り着こうとしていた。

「もしかして、あなたが妃を迎えない理由は、セオドール殿下のためなの……?」

 フィラーナが真っすぐにウォルフレッドへ視線を向けると、彼は驚いたように少し目を見張った。


< 162 / 211 >

この作品をシェア

pagetop