冷徹皇太子の溺愛からは逃げられない
 フィラーナはすぐに言葉が出ない代わりに、じっとウォルフレッドの瞳を見つめた。

(……この人は、長年培ってきた信念と、私へ感情の狭間で葛藤しながらも、すべてをさらけ出して話してくれた)

 精一杯の誠意を見せてくれたと思うと、フィラーナは胸の奥がぎゅっと締め付けられるのを感じた。


(なんて不器用な生き方をしている人なの……。もうエリク様はいないし、セオドール殿下を託されたわけでも、王位について約束をしたわけでもないのに……)

 だが、それは自分とて同じことだとフィラーナは気づく。

 これまで兄のハウエルから事故のことで責められたことは一度もないばかりか、彼はいつも妹が苦しみに苛まれていないか気遣ってくれる。

 それでも、兄のために何か力になりたいと決意し、その信念のもと生きてきたのだ。




(……私たちって、似た者同士だったのね)

 自然とフィラーナの唇から柔らかい笑みが溢れる。


 例え、誰もがあなたのしようとしていることを理解しなくても、私はずっとあなたの味方だからーー


 フィラーナは、離れていこうとする彼の手に自分の指を絡めるようにして引き戻すと、強く握り返した。
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