冷徹皇太子の溺愛からは逃げられない
フィラーナは素早く立ち上がろうとしたが、後ろ手に縛られているので身体のバランスが保てず、フラフラとよろめく。そんな彼女の肩を支えたのは同じく潜入していたユアンで、縛っていた縄を剣で手早く切った。
「遅くなり申し訳ありません、フィラーナ様。外に騎士団が待機しています。安全な場所へ早く」
ユアンに促され足を前に出しかけたフィラーナが振り返ると、何度目かの撃ち合いの末、ウォルフレッドがサイモンを斬り伏せているところだった。
グランは自分を守っていた手下たちが次々と床に沈み捕らえられていく様を目の当たりにし、ここから脱出するためにひとり戸口に向かって走り出した。しかし、ウォルフレッドの水平に放った剣がグランの頬を勢いよく掠め、扉に突き刺ささると、グランは腰を抜かしたようにその場にへたり込んだ。
「ウォル!」
床に転がっていた敵の剣を拾い上げたフィラーナが、掛け声とともにそれをウォルフレッドに放る。宙で受け取ったウォルフレッドが、その剣先をグランの喉元に突きつけると、かつてのこの国の宰相は、観念したように力なく項垂れた。
ホッとしたのも束の間、フィラーナはルイーズの姿がないことに気づいた。
(どこ……⁉)
「遅くなり申し訳ありません、フィラーナ様。外に騎士団が待機しています。安全な場所へ早く」
ユアンに促され足を前に出しかけたフィラーナが振り返ると、何度目かの撃ち合いの末、ウォルフレッドがサイモンを斬り伏せているところだった。
グランは自分を守っていた手下たちが次々と床に沈み捕らえられていく様を目の当たりにし、ここから脱出するためにひとり戸口に向かって走り出した。しかし、ウォルフレッドの水平に放った剣がグランの頬を勢いよく掠め、扉に突き刺ささると、グランは腰を抜かしたようにその場にへたり込んだ。
「ウォル!」
床に転がっていた敵の剣を拾い上げたフィラーナが、掛け声とともにそれをウォルフレッドに放る。宙で受け取ったウォルフレッドが、その剣先をグランの喉元に突きつけると、かつてのこの国の宰相は、観念したように力なく項垂れた。
ホッとしたのも束の間、フィラーナはルイーズの姿がないことに気づいた。
(どこ……⁉)