冷徹皇太子の溺愛からは逃げられない
 それから話題はフィラーが最も知りたかったことへと移った。もちろん、ルイーズについて。

「ルイーズは……お前が目覚める前に、家族とともに王都を去った」

「え……?」

「彼女はグランに利用されたとはいえ、奴に加担したことは紛れもない事実だ。本人も罪を認めていて、厳罰を覚悟していた」

 だが、斬られそうになったフィラーナを身を挺して守ろうとしたことから、その良心が認められ、さらに父親のコーマック男爵が爵位と領地の返上を申し出たため、特別に恩赦が認められた。コーマック一家は国外追放を免れ、地方への移住権を与えられた。

「そのあと、ルイーズは山間の修道院に入ったそうだ。そこで罪を償いながら、修道女として余生を送ることを決めたんだろう」

 フィラーナはすぐに言葉が出なかった。真面目なルイーズが何のけじめもつけずにいるとは考えていなかったものの、まさかそこまで自分を追い込んでいたとは思ってもいなかった。

「私の……責任よね? 私がルイーズをセオドール殿下に会わせたりしなかったら、彼女はグラン卿につけ込まれたりすることはなかったはずよ……」

 膝の上の拳をぎゅっと握りしめるフィラーナの肩を、ウォルフレッドはさらに強く引き寄せる。

「いや、奴の狙いは最初からセオドールだった。例えルイーズではなくとも、セオドールを唆す役目の女をグランは用意するつもりでいたはずだ。それに、人の心は誰にもわからない。グランの甘い言葉を回避しようと思えばできたはずだが、ルイーズは判断を誤ってしまった。それは彼女の弱さであって、お前にどうにかできることじゃない」
< 206 / 211 >

この作品をシェア

pagetop