冷徹皇太子の溺愛からは逃げられない
(ま、まさか、ウォルと王太子様は……同一人物なの……!?)

 先程の王太子が放った冷たい言葉には全く動じなかったフィラーナも、さすがに強い衝撃を受けた。だが確証はなく、あくまで可能性の話である。

(王太子様は私の方を見ても、表情を変えなかったわ。それはそうだわ、私に見覚えがないからよ)

 そう自分に言い聞かせるものの、胸中に生じた動揺はそう容易に消せるものではない。

(……でも、もしそうだとしたら……どうしよう。私……あの時とんでもなく、失礼をはるかに越えて馴れ馴れしく接してしまったわ……!!)

 自分の行動を振り返り、フィラーナの顔が徐々に青ざめていく。

(それに勝手に王太子様の御剣まで抜いて、挙句、顔の横に突き出して……それがもし少しでもずれてしまってたら……王太子殿下のお顔に傷が……!!)

 そうなってしまっていたら、ただちに捕縛され、問答無用で裁判にかけられることなく、処刑されていただろう。
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