witch
長野先生に車で送ってもらった道を思い出しながら私は神通家を目指した。

長野先生の車で行った時は近くに感じたのに、今歩いて向かうと意外にも遠い事に気がつく。
広浜中学生を過ぎた辺りから、体にどっと疲れがのし掛かってきた。

重い足に鞭をいれ、何とか神通家にたどり着く。
辺りはまだ夕方だと言うのに、人の声さえもしない。
静かな夕方だった。

「ごめんね、こんな時間に突然呼び出して」
時彦が深く頭を下げる。
ノリの軽い人だけの人だと思っていたが、案外礼儀を重んじる一面があるのかもしれない。

時彦は一番奥の大広間の様な部屋に私を案内する。
何もない、質素な大広間だ。

本当にこの家は建物の中に何もない。
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